全国各地旅ランあれこれ 続編Vol.3
- 南部 哲郎
- 2022年12月14日
- 読了時間: 6分

<全国各地ランニングコースあれこれ、続編3つめ。是非お楽しみください。>
【函館】このランニングおすすめコースは桜の時期なら五稜郭に限る。早春以外の通常期ならば定番は異国情緒溢れる街並みがいい。路面電車軌道に沿って函館山に向かう。十字街を右にカーブすると八幡坂だ。函館を代表するフォトジェニックな海に下る坂道。CMやドラマなど撮影のメッカでもある。その周辺にはハリストス正教会・元町教会、旧公会堂・元町公園など核心部に入る。もっと西に向かって名刹高龍寺を過ぎると外国人墓地。同じ港町横浜と違って何となく北国らしい寂寥感が漂う。ここで折り返して、ベイエリアの赤レンガ倉庫群を周回、谷地頭を経て立待岬まで走ろう。眼下の津軽海峡に思いを馳せると俳人・石川啄木気分になれるかも。
【福島】県庁所在地の街の真ん中にポッカリと島のように浮かぶ信夫山(標高275m)。この小高い山は市民の手軽なランニングコースであり散歩道。近くの阿武隈川サイクリングロードと組み合わせると結構タフな朝ランコースになる。シンボル信夫山は熊野・羽黒・羽山の三山からなり、展望台も5つでそれぞれに趣がある。朝ランもいいが、夕方もいい。展望台からの夜景がなんとも優しくノスタルジックなのだ。私がトワイライト夜景に見とれていると、居合わせた地元の古老が「福島の百万ドルの夜景はうづぐしべ(きれいだろう)?」とはにかみドヤ顔。百万ドルとはずい分なインフレだなあと思わず苦笑した。そうそうこの地は朝ドラ「エール」の偉大な作曲家古関裕而さんの故郷でもある。時間があれば記念館に立ち寄りたい。
【新潟】日本海側最大の都市であり、甲武信ヶ岳を水源とする日本一長い信濃川(367㎞)の河口の街。市内中心部にかかる萬代橋は重要文化財だ。ランニングはこの橋が起終点になる。繁華街・古町5丁目のアーケード街は、漫画家水島新司さんのドカベン・あぶさんなどキャラクターのモニュメントが数多くあり楽しませてくれる。日本海に出ると、約38万本の黒松林が5キロに渡って広がる。穏やかな砂浜の波打ち際を走ると、堂々たる佐渡島が洋上から優しく出迎えてくれる。潮風と朝日を全身に浴びて「今日も頑張るぞ!」と佐渡島に宣誓。ホテルに帰ると美味しい朝食が待っている。さすがは米どころ新潟、魚沼産コシヒカリをお代わりで美味しくいただきました!
【金沢】加賀百万石の前田利家公を藩祖とする北陸の古都。大戦の空襲を受けていないので、市内各地に歴史的風情が今も残っている。朝ランはまずは金沢城に登城。石川門をくぐり五十間長屋・菱櫓など眺めながら城内を縦横無尽に走ろう。お城を出ると東に向かい浅野川の右岸左岸にひがし茶屋街・主計町茶屋街が時代劇セットのように佇む。西側に折り返すと犀川近くにはにし茶屋街。コンパクトな市内中心部はあっという間にラン周回できる。日中に観光するなら通称忍者寺(妙立寺)は見逃したくない。見どころ満載だ。少し足を延ばせば、白山市の白山比咩神社。全国に3000社(われら善福寺川白山前橋の成宗鎮守白山神社も傘下)ある白山神社の総本社で、霊峰白山(標高2702m)を神体山とする。周辺は白山水系の豊かな伏流水と温泉に恵まれている。ラン後はゆったり温泉に浸かって、治部煮を肴に鶴来の銘酒菊姫を嗜む。観光地化された市内近江町市場にはない安らぎ、これぞ古都金沢!である。
【津】三重県の県庁所在地は少し地味かも。でもこの地は築城の名手・藤堂高虎公32万石の城下町。お城跡に復元された三層の隅櫓がランニングの中核だ。まずは隣接する高虎公を御祭神とした高山神社を参拝する。ここでこの地の仕事の成功を祈願しよう。次に向かうは小高い丘を少し登ると津偕楽公園がある。藤堂家八代藩主の山荘跡で、自然の丘陵や谷の趣を巧みにいかしてつくられている。コンパクトだが周回すると意外と面白い。反対側に安濃川を下ると海に出ることもできる。太平洋の砂浜だ。早朝の海岸はほとんど人影もなく、大海原をひとり占めできる。そして忘れていけないのは地元のソウルフード蜂蜜まん本舗のお饅頭。こしあん入りの素朴な和菓子は早起きランニングのご褒美だ。シンプルで素朴な味わい、これも当地らしい。
【広島】昭和20年8月6日午前8時15分、日本人は決して忘れてはならない日時。人類初の原爆が広島の街に投下された。死亡者数は今も正確にわかっていない。爆心地では50~80%の市民が犠牲になったという説もある。この街のランニングは平和記念公園を中心に世界平和を願いながら周回する…。そんな朝ランが一番だ。原爆死没者慰霊碑に刻み込まれた「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから」、原爆の犠牲者に対して反核の平和を誓うこと、そんな直向きなランニングがこの街には相応しい。近くの広島城にもランニングコースをとろう。日清戦争の時、この城の本丸御跡に大本営が置かれ、広島は「軍都」の様相を呈していく。この街から戦争の悲惨さが消えることはない。
【福岡】福岡といえば福岡城周辺にある福岡国際マラソンの平和台陸上競技場、大濠公園(1周2キロ)の周回コースが地元ランナーの聖地。とりわけ大濠公園は出張族も博多や天神辺りのホテルから手軽に朝ランできる。でもここで満足するのは凡人ランナー。足に自信があるなら、もう少し西に進んで明治通りを地下鉄2駅分走ろう。修猷館高校を右に曲がると、なんとそこはサザエさんロード!作者長谷川町子さんとサザエさんが立ち話している銅像まであるではないか!実はサザエさんは長谷川町子さんが福岡在住の時に世に出たのだ。諸説あるが東京世田谷には波平さんの転勤・転職で引っ越したという。サザエさんのルーツを辿る朝ラン、これは未明の朝からほのぼのと楽しい!
【長崎】昭和20年8月9日11時2分、広島に続いてここ長崎にも原爆が投下された。平和公園へのランニングを終えたら、反対側の東に足を転じてせっかくだから異国情緒溢れる中心街を走ろう。めがね橋(写真)を渡ったら繁華街・浜町アーケード街を走り抜ける。早朝ならばガラガラだ。愛称・浜んまち商店街、地元っ子はこれを「浜ぶら」というらしい。商店街を過ぎるとオランダ坂、グラバー園も遠くない。国宝・大浦天主堂を見上げて平和祈願したら、山沿いにある観光通りに出る。目指すは1629年創建の明朝末期文化の崇福寺だ。長崎にある3つの国宝のうち2つはこの唐寺にある。お腹を空かしてホテルに帰ると、さすが長崎だ。朝からバイキングで本場ちゃんぽん・皿うどんが食べられる。これで今日の仕事もバッチリだ。
■さて、全国朝ランあれこれも3編連続でひとまず休筆。これで計22都市をご案内しました。2022年を締めくくるべく22都市にこだわってみました(笑)。皆さん、走るって、本当に楽しいですね。では皆さん良い年をお迎えください!新年も元気に走りましょう!■
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