土浦はゾンビの群れ:2023年かすみがうらマラソン出場記
- 佐原 匡
- 2023年4月18日
- 読了時間: 3分

仰々しいタイトルだが、「実話」だ。
かすみがうらマラソンは毎年過酷な天候に見舞われるらしい。今年は4月16日開催で、前日の雨が深夜3時まで降り続いていた。従って更衣室のビニールシートの下はびしょぬれで、大会本番の昼はかなりの高温が予想されていた。スタート前のアナウンスでも、「今日は24℃になる可能性あり」と、繰り返していた。実際には、最高気温21.4℃、風は2.9メートル(午後2時現在)、降雨はレース終了後、ということで予想ほどのことはなかったのだが、12時から15時まではずっと晴れで、まだ暑さにはなれていない体にはこたえた。家に帰って気が付いたのだが腕は日焼けし、時計の部分だけが白く残っていた。
さて「ゾンビ現象」だ。私自身30kmを過ぎたあたりから急に体の自由がきかなくなってきた。前半は控えめで、後半に備えるつもりだったが、異変が起きてしまったのだ。右足はふくらはぎ痛、そして左足は太腿痛だ。特に、太腿は重傷で、筋肉に力が入らない。左足に重心を移した際、踏ん張れず、そのまま倒れてしまいそうな感じだった。倒れるだけならまだ良い。恐ろしいのは左側にはレンコン畑が続いていることだ。ここに落ちたら全身泥だらけになってしまう(ちなみに茨木県のレンコン生産量は日本の50%以上)。アンパンマンやピカチューの仮装をしたランナーもいたが、泥だらけのレンコンマンでは誰も寄り付かないし、常磐線にも乗れない。当然タイムも落ち始めた。それまではキロ5分半くらいのペースだったのだが、1分プラス、そして2分プラス。休憩所に入るたびに水分とバナナを摂取し、足にスプレーとエアサロンパスをかけ、道端で梅干しを配ってくれる家があればその厚意に甘えながら、頭の中はあと何キロでゴールかとそればかりだった。
ただ、他のランナーを見ていて気がついたのだ。倒れこんでいる人、痙攣したのか道端でストレッチングをしている人。それだけではない。大勢の人が歩いているのだ。それも、うなだれてとぼとぼと足を引きずっている。その姿は、映画で見たゾンビそのままだった。私はこれほどたくさんの人を追い抜いたことはなかった。
実は話はここで終わらなかった。もうすぐ40kmの地点になると、不思議なことに「ゾンビ」はいなくなっていた。代わりに現れたのは、更にスピードの落ちた私を追い抜いていく大群だった。状況は一転した。私はこれまでこれほどたくさんの人に追い抜かれたことはなかった。一体何が起こったのだろうか。ここからは私の妄想だが、死体のまま蘇ったゾンビが人間に生き返ったのだ。そして逆にゾンビ化した私は40kmから18分もかけてようやくゴールしたのだった。
ゴール地点は閑散としていた。タイムは4時間35分33秒(ネット)と、2009年のベストタイムから30分以上も遅れていた。ベストタイムといっても、私がこれまで参加したことのあるマラソン大会は、2009年の東京マラソンだけなので、今回のタイムもセカンドベストに当たる。こうして今回の大会も幕を下ろした。
最後に賞品の「備食ライス」について追記したい。これは実に優れものだった。普通ならお湯や水が必要だが、「このままポリポリ」食べられる、とのこと。「スイーツとしてハム、クリーム、チョコレート等に混ぜて」も大丈夫。そして、究極の殺し文句がこれだ。「-50℃でも凍らないのでエベレストの頂上でどうぞ」。販売元の水郷つくば農業組合はスケールが違う。
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